« オメガデ・ビルレディース再び | トップページ | 記録と、人間の記憶、そして時代認識 »

2006年2月25日 (土)

宝飾品の存在意義

 大学を卒業して就職した会社での△11の仕事は宝石販売だった。本当は子供服部門志望で入社したのだが、入社試験の成績が良かったので出世コースの宝石部門へ回されたのだと後で聞いた。

 三越にティファニーを見に行った時のことをよく覚えている。
 ルビーはどれも同じサファイアはどれも同じ青エメラルドはどれも同じ緑。そしてどれもが透き通っていて美しい。いつも売っていた自社製品は濃かったり薄かったり内包物が多いのか濁っていたりするが、そんなことはティファニーではありえないのだろう。それぞれの宝石に基準を設け、それ以外の薄かったり濃かったり内包物の多かったりする石を仕入れないのだと思う。
 ダイヤモンドはほぼ全部IFとVVS1のみ。時々FLとVVS2があった、、、と記憶している。カラーグレードはどうだったか、多分Gくらいが最低ラインだったろう。

 同僚の女性がK18YGのオープンハートリングを持っていた。オープンハートのデザインはティファニーが最初だが、その後世界中でコピーされ、自社製品にもそのデザインがあった。その女性の持っていたのは本物である。
 ある日の閉店後、ティファニーの本物をその女性に出してもらい、自社製品をショーケースから出してもらい、並べて比較してみた。ガラスケースの上に置くとティファニー製は「ゴトリ」と、自社製は「チャリン」と言う。何故かって自社製品は強度の限界まで内側を削ってある。ティファニーは削るどころか内側が丸く研磨してある。下が指側、上が外側だとして自社製の断面は「∩」、ティファニー製は「●」なのだ。だから自社製は軽くて安っぽいし、尖っていて装着した時心地良くないし、強い衝撃が加わると曲がる。
 余談であるが、ある時本社から来た女性が言っていた。

 ウチの社長はよく「我が社は世界一だ」と言うけれど、リングの内側を削る技術だけは掛け値なしに世界一だと私は思う

 一体、宝飾品とは何であろうか。
 石ころが高値で取引されるその理由は本来一つしかない。その石が美しいからである。美しいから宝石になるのであって、名前が「ダイヤ」だから「サファイア」だから「ルビー」だから宝石なのではない。
 △11はタンザナイトアクアマリンが好きだった。これらは美しい石が多い。美しくないと誰も見向きもしないので、そもそも内包物が多く濁っていれば市場に出て来れないのである。宝石本来の姿がここにある。
 地金をケチって内側を削り、強度が落ちて装着した時心地良くないリング。「これも鉱物学的にはダイヤモンド」と真っ白な安い石。そんなものに何の価値もないと思う。贅沢品が贅沢でなければ自己矛盾である。良い物が買えないなら買わない方がマシだ。

 婚約にダイヤモンドリングを贈ってもらうのが女性の夢だという。しかし、△11に言わせればダイヤモンド程夢のない宝石はない。
 グレードを指定すれば値段が決まる。要するに形を変えてあっても、男性が宝石屋に支払った札束そのものだ。その割にはリセールバリューもない。
 婚約指輪の相場は「月収3ヶ月分」と聞いたことがある人が多いと思う。宝石屋に1年チョイ勤めて、いや勤めなくても誰でも知っていることだが、そんなに婚約指輪につぎ込む馬鹿はいない。あれは高い宝石を売りたい人が書いたキャッチコピーに過ぎない。しかも元々はヨーロッパで「月収1ヶ月分」アメリカで「月収2ヶ月分」とセットで書かれたキャッチコピーであったが、生き残ったのは日本だけだという。
 そんなものに日本の女性は夢を託すのであろうか。そんな馬鹿女どもに日本の男性は札束を消耗し続けるのであろうか。若い2人が本当に資金を必要とする場面は他にいくらでもあるだろうに、、、

 余談だが、最近結婚指輪を購入しようとティファニーへも見に行ってちょっとがっかりしたのは、VSグレードが幅を利かせていることであった。△11の勘違いで昔からVSグレードも扱っていたのかも知れないけれど、昔のような特別な存在ではなくなったのかも知れない。

|

« オメガデ・ビルレディース再び | トップページ | 記録と、人間の記憶、そして時代認識 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 宝飾品の存在意義:

« オメガデ・ビルレディース再び | トップページ | 記録と、人間の記憶、そして時代認識 »