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2012年11月23日 (金)

「日本百名山」を考える

 多分常念岳山頂だったと思うが、山で隣に居合わせたおばさんが「百名山完登まで残りいくつになった」という話をその仲間としていて、確かな数字は記憶にないが、「もうかなり色々登ったんだねぇ」という感じの数字だった。残り20座台前半だったかな?
 この「百名山」とは深田久弥の随筆集「日本百名山」に載っている山のことで、選定基準は「山の品格」「山の歴史」「個性のある山」の3つで、付加的条件として「標高1500m以上」「(深田久弥)本人が登頂した山であること」だという。これ全部に登ることを目標に登山に来ている人が結構いて、場合により登頂数がステータスとして扱われている。
 △11は以前からこの「百名山を登る」ということにうっすら疑問と言うか違和感を覚えていたのであるが、そのことをこの時また改めて認識したのである。

 なぜ違和感を感じるのか。

 一つは形式的なことである。
 深田久弥はかなり色々な山に登って知識も経験もある中で慎重に選んでいるのではあるが、やはり数ある日本の山の中から「日本百名山」を一人で選ぶ資格がある人間ではない。
 ただ随筆集「日本百名山」出版当時これがこんな騒ぎになるとは深田久弥自身到底想像ができなかっただろうし、深田久弥本人の当初の意識としては自分の随筆集の題名を「日本百名山」としただけであってそこに提示した百の山を「日本百名山」と呼んだわけではないのかも知れないし、呼んでいたとしても現在存在する権威の匂いは微塵もなくまた読者と著者の両方の無意識に「(深田久弥の選んだ)日本百名山」と前置きつきで語られていたに違いない。そのことは、随筆集「日本百名山」が出版されたばかりの状況を想像できれば誰にでもすぐ分かると思う。随筆集「日本百名山」を読んだこともないのに深田百名山の百座完登を目指す登山者の群れもまだなく、「日本三百名山」も「日本二百名山」も「世界百名山」も「花の百名山」も「新・花の百名山」も「一等三角点百名山」も「北海道百名山」も「あおもり110山」も「東北百名山」も「うつくしま百名山」も「会津百名山」も「甲信越百名山」も「越後百名山」も「関東百名山」も「栃木百名山」も「ぐんま百名山」も「信州百山」も「信州ふるさと120山」も「山梨百名山」も「東海の百山」も「静岡の百山」も「岐阜百山」も「飛騨百山」も「関西百名山」も「大阪50山」も「ふるさと兵庫50山」も「ふるさと兵庫100山」も「奈良百遊山」も「中国百名山」も「ひろしま百名山」も「四国百名山」も「大分百名山」も「九州百名山」もまだないのである、、、つかアンタたちよくまぁこんなに作ったねぇ(呆)
 結果として、公的でなくまた公的ではあり得ないものにさも公的であるかのように聞こえる名称がついてしまった。そしてこの問題は岩崎元郎がむちゃくちゃな「新日本百名山」を選び始めて誰の目にも顕在化した。
 そのことから、深田久弥の随筆集は固有名詞なので仕方なく「日本百名山」と表記しても、その中で選ばれた百の山のことは「深田百名山」と表記する人が結構いる。△11もそれに賛同する。それであれば「多数ある日本の山の中から、知識と経験を普通より持っている深田久弥という名前の人が自分の見識に従って素晴らしいと思って選んだ山の百座です」で済む話だ。

 無論実質で問題がなければ、すなわち「日本百名山」という名称どおりほとんどの人が納得するような選定であれば、形式だけを問題にされるべきではないだろう。しかし、山というものは感情・感傷的な存在であり、「ほとんどの人が納得するような選定」などは不可能である。実際、実質的な問題もある。
 深田百名山で△11が間違いなく登頂したことがある山を挙げてみると2012年11月時点で木曾駒ヶ岳、仙丈ヶ岳、乗鞍岳、甲斐駒ヶ岳、八ヶ岳(赤岳、横岳、硫黄岳)、雨飾山、槍ヶ岳、穂高岳(奥穂高岳)、北岳、間ノ岳、常念岳の11座である。この他御岳は随分前なので記憶が曖昧ながら最高地点である剣ヶ峰には到達していないものの準頂上と言える摩利支天まで行ったハズだ。大雪山(旭岳)はロープウェーを降りてから少し登ったことがある。富士山は富士宮口から6合目まで登ったことがある。んで、その範囲の印象では、例えば。
 間ノ岳は「住んでいたことがある静岡市の最北端、かつ静岡県の最北端」で個人的に思い入れはあるものの、現地は「北岳南尾根の丸い丘」「それぞれの道が北岳、塩見岳、農鳥岳に通じる三叉路の交差点」に過ぎず、名山と呼ぶにふさわしいとは全く思われなかった。
 槍ヶ岳は周辺から見ている分にはどこから見ても鋭く美しい切っ先を天に向けており名山だとは思うが、現地は「工事現場」「天井なし、壁の代わりに断崖絶壁、岩敷の8畳間」だった。登るためより、眺めるに向く山なのではなかろうか。いやそもそもどこの山頂でもその場所には達成感以外の特別なことはないんで、周囲から眺めた方が美しいに決まっている。
 甲斐駒ケ岳には北沢峠から登ったが、黒戸尾根から登らねば「深田百名山の一つである甲斐駒ケ岳に登った」とは言えないように思われる。選定理由の根底にあるであろう信仰登山の観点から言えば、99%以上の人が使っているであろう北沢峠など裏口のようなものだ。鳥居をくぐらず裏口から神社の敷地に入って拝殿を後ろから拝んで「参拝した」という馬鹿がどこにいるか。1980年に開通した南アルプススーパー林道は1964年7月に出版された随筆集「日本百名山」の前提にない。
 行った季節・天候・時間帯・同行者・個々人の感性等によっても印象は違うだろう。 
 △11は満月の夜に乗鞍岳畳平駐車場で見た景色を忘れないが、その場所は、翌日の昼には普通の観光地だった。
 仙丈ヶ岳は△11個人としては非常に良い印象がある。そしてその好印象の理由は、断言するが、間違いなく「かわいい若い女の子たちと登ったから」だ。△11だけではない、深田百名山に雨飾山が入っているのは深田久弥と奥様との思い出が関わっているからと聞いたこともあるし、そして人間の感覚なんてものはそんなものだ。実際に△11が雨飾山に登った印象からは「日本で百に入るような山か?」と思う。
 自分の住んでいる地域の山はやはり感慨深いだろう。深田久弥の故郷、福井県の荒島岳が深田百名山に入っていることについてはそういう観点から批判がある。例えば△11の場合毎度スキーに行っていた木曽福島スキー場辺りから見える御岳に特別な思いがある。また遠く離れた地域の山はどれだけ頑張っても近所の裏山よりは疎遠に違いない。住んでいる場所から遠い山に一度だけ行って、その印象でその山の価値を決めて良いのか。また深田久弥だって日本中の山という山全てに登ったわけではなく、現に本人が随筆集「日本百名山」出版後しばらくして「日本百名山を出版した時、この山(△11注:ニペソツ山)をまだ見ておらず、ニペソツには申し訳なかったが百名山には入れなかった。実に立派な山であることを登ってみて初めて知った」と書いている。
 例えば信州で百名山であれば選べる人もいるだろうが、日本では地理的範囲が広すぎて全部知っている人が誰もおらずそもそもからかなり無理筋なのである。

 「何を基準にどこに行こうと私の勝手だ」という声も聞こえて来るし、まぁそれもそうなのだが、そう言ってしまって終わらない問題もある。
 例えばあまりに人が集中すると自然環境は荒廃するんである。
 例えば無理に行って遭難する人も出るんである。2009年07/16トムラウシでアミューズトラベルのツアーが遭難し9名死亡したが、そこにツアーがあったのは深田百名山に含まれていたからだろう。
 余談になるが、登山ツアーというのは何なのだろう、といつも思う。ツアーだからといって現地のことを調べないでついていくのであれば無謀登山の誹りは免れ得まい。現地のことを自分でも調べて準備するならツアーでなくても自分だけで行ける。ツアーで行くだけ制約が増え、さらにはツアー会社の質も調べる必要が出てくる。キリマンジャロやマッターホルンに登るのなら現地情報なり登山技術の観点でガイドが着く必然性もあるだろうが、特別登攀技術が要らない国内の一般ルートのみで登頂できる山に行くのになぜツアーなのだろうか。「お金を払って安全を買った気になる」以外に一体何の利点があるというのだろう。
 「初心者の時だけツアーで行ってガイドから学び、次から自分だけで行く」?
 まぁ理屈から言えばあり得なくはないけど、本当にそう思うなら旅行社のツアーでは質量ともに不充分なんで登山のガイドを探すべきだし、その程度のことでわざわざガイドなんか雇わなくてもインターネットで先輩の話を読んでいるだけで充分だ。

 そもそもどうして随筆集の目次を登山ガイドに使うのかねぇ、、、

 取り敢えず、△11は自分で「深田百名山を登り潰そう!」とは全く思わない。人にも勧めない。随筆集「日本百名山」を読んで登りたくなり、次の行き先候補に加える可能性はあっても、自分の行く場所は自分で選ぶ。

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