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2013年10月10日 (木)

登山におけるストーブ、2013年10月版

 ウェブを見ていると初心者から時々「登山用のストーブにもアルコール、固形燃料、ガス、ガソリン、灯油、と色々ありますが、一体燃料は何を選べば良いでしょうか」とかいう質問が出ている。

 これはちょっとでも実際に山に行っている人の中では、ずっと前に結論が出ている。最初のストーブは迷うことなくガスにすべきだ。
 ジジイなのか初心者相手に「寒冷地では液体燃料の方が有利」とか書く人が時々いるが、少なくとも初心者が行く範囲では、20年以上前に寒冷地用ガスが出た時点で解決した論争だ。
 液体燃料の火力調整の困難やプレヒートの手間などの問題は、以前より軽減されたとは言えまだそのまま残っている。
 ガスに問題があるとすれば、アルコールやガソリンや灯油と比較して、燃料を入手できる場所が限られること。特に問題となるのが航空機に乗る場合で、航空危険物貨物の代表例(PDF形式) (国土交通省航空局安全部運航安全課)を参照すると、燃料は{高圧ガス」であれ「引火性液体」であれ危険物として載せられない。初心者で、最初に行きたくなった山が飛行機に乗って行く場所である人は、機材を買う前に現地で燃料を入手できるかどうか確認すべし。これは燃料が何であれ共通なのだが、現地調達の可能性が高いのはガスより液体燃料だろう。

 ガスを選ぶとして何を選ぶか。まず、いわゆるカセットガスと呼ばれるCB缶と、登山用に多用されているOD缶のどちらにするかだが、これはOD缶にすべきだと思う。
51gufsadtl_sl500_aa300_ 41o1ss59l_aa300_  CB缶はJIS規格に定められているため互換性が高く、それこそ日本の津々浦々コンビニでも安価に買えるのが大きな利点だ。しかしこの利点はノーマルガスのみの話で、登山で使う寒冷地用ガスとなると入手が俄然困難かつ高価につく。缶の構造からしてOD缶の方が頑丈で安心だし、同じ価格なら寒冷地用のCB缶を探して歩く理由はない。また登山用として開発エネルギーが掛けられて来たわけではないので、小型軽量モデルがないなど選択肢が限られてしまう。

41aqnahjxbl_ss400_51t8puanwrl_aa300__241xzr0gwol_ss500_ OD缶の製品は、液体燃料やノーマルガスのCB缶と比較すればランニングコストが高くつくが、1回の山行で1缶使い切るとしても数百円の話だ。しばらく実際に使った上でもし「お金かかるなぁ」と思う人がいたら、その時点で自分で考えれば済む。
 OD缶はタテマエとして「自社の製品をお使い下さい」ということになっている。各社共通規格で自己責任で使う分には使えるのだろうし非常時には流用できる可能性が高いことは知っておいた方が良いが、公開の場で人に対して「使えます」と言えるかどうかはまた別問題だ。△11は言わない。本当かどうかは知らないが、実際組み合わせにより燃料漏れなどもあるらしい。そこまでして他社製品を組み合わせるメリットもない。となればOD缶で最初のストーブとガスを買う時どこの製品を選ぶかは相当重要な問題だ。
 できるだけガスカートリッジを入手しやすいメーカーにしておかなければならないし、今の段階で買い足す気がないとしても将来を考えると超小型軽量モデル(本体50g前後)、大火力モデル(3500kcal/h前後)、分離型モデル、この辺が一通り揃っていないメーカーをわざわざ選ぶ必要はない。

 20年前には登山用火器の業界で3強を挙げるとしたらEPI、プリムス、キャンピングガスだった。
 スノーピークが小型軽量モデル「地」で業界デビュー、この流れにプリムスは対抗したがEPIは少し乗り遅れた。
51sjvzj9rtl_sl500_aa300_  キャンピングガスはOD缶でなくCV缶とかCT缶とか互換性のない規格を使っていて、個人的な印象ではそれでダメになった。左の画像はCV缶。現在どうでも良い話と思われるかも知れないCV缶やCT缶の話なんぞなぜしているかと言うと、マイナーな規格の消耗品を使う怖さを知っておいて欲しいからである。
 結果、今3強を挙げるとしたらプリムス、スノーピーク、EPIだろう。

 以下2013年10月調査で各メーカーの各製品を勝手に分類しリストにしてみた。超小型軽量モデルは50g前後、小型軽量モデルは100g前後、中堅・定番モデルは200g前後とした。価格は販売元が公式ウェブサイトで表示している税込価格→Amazon実売。火力はメーカー発表値で、複数ある場合は寒冷地用ガスを使った数値。重量の小数点未満は四捨五入した。同クラスに複数の機種が入る場合は重量の軽い順に挙げた。点火装置は普通付属するので、付属しない機種のみにその旨を記載した。超大火力モデルも挙げたけど、重量より火力優先の用途にはプロパンガスを使うのが素直なので、本当は要らないね。
 分離タイプは、吹きこぼしてしまった時に消火できるという利点がある。一体型は火力調整ノブがゴトクの下にあるので、消火しようにも吹きこぼれた熱い湯が降り掛かりつつある状態だったりするので場合により消火が困難なのだ。ただこのリスクは手袋を常備することで回避できる。最初に消火するのでなく、まず鍋を降ろすのだ。

 

プリムス

スノーピーク

EPI

超小型軽量

P-115、56g、2100kcal/h、¥7350→6426 GST-120R、56g(点火装置なし)、2800kcal/h、¥6980→6980  
小型軽量 P-153、116g、3600kcal/h、¥9135→8221 GS-100、88g(点火装置なし)、2500kcal/h、¥4480→4480

GS-100A、106g、2500kcal/h、¥5980→5480

GS-110AR、106g、2800kcal/h、¥5980→5980
QUO、98g、2600kcal、¥6300→5470

REVO-3700、111g、4200kcal、¥9975→7980
中堅
定番
P-173、173g、3800kcal/h、¥11025→8788

IP-2243PA、253g、3600kcal/h、¥6720→5197
  BPS-III、165g(点火装置なし)、3700kcal、¥7140→5997

NEO、185g、4000kcal、¥8925→6959

BPSA-III、285g、3700kcal、¥9240→?
分離 P-154S、178g、3000kcal/h、¥12810→11215

P-133S、198g、2400kcal/h、¥9765→7749
  SPLIT、234g、4200kcal、¥15225→12180

APSA-III、426g、4000kcal、¥12075→9780
超大火力   GS-1000、1800g、 8500kcal/h、¥38800→? GSSA、975g、6500kcal、¥19950→14156

 △11はプリムスを使っていて、初心者にもこれを勧める
 EPIは、分離型ガスストーブも寒冷地用ガスもここが元祖であるなど伝統と実績のあるメーカーであるが、超小型軽量モデルがないのは大きなマイナスだ。多分メーカー内での位置づけではQUOがそれに当たるのだと思うが、他メーカー製品とは競合できていない。
 スノーピークは好きなメーカーではあるが、登山用ストーブを選ぶ場合、実は現在検討に値する機種はGST-120Rだけである。小型軽量に分類されている機種はこれより重くなるだけで独自の存在価値がない。そのGST-120RもプリムスP-115と重量で同等ながら点火装置がないだけ劣り、火力ではプリムスP-153に劣る。プリムスP-115より火力はあるので「一台で全部済む」という言い方もできるが、中途半端と言えば中途半端、超小型軽量モデルは火力を犠牲にしても小型軽量に徹してくれた方がありがたい。付属点火装置、後述する通り有無に関わらずライターは別に持つのだが、点火に手間取ったりライター紛失や故障で点火できないなんて可能性をなくせるから、初心者には装着モデルを勧めたい。また分離型は現在存在しなくなっているようだ。となればずっと安定してシェアを取って来たプリムスを差し置いて選ぶ理由がない。
 また燃料ボトルは赤、飲料ボトルは青で!に書いたように、プリムスは缶の色も「正しい」。

 プリムスの中で登山用に初心者が使うとしてどれを選べば良いかと言うと、好みによって小型軽量最優先のP-115と、小型軽量ながら大火力を兼ね備えるP-153から初心者が自分で選べばいい。後者を選んだとしても「重い、デカい」ということにはならないだろうし、前者を選んだとしても「火力が足らない」ということはないだろう。どっちを選んでも間違いにはならないし、最終的に両方持っても良いくらい。

 小型軽量最優先ならP-115。びっくりする程小さくて軽い。ただ実使用時はOD缶を装着するので、数値の比較程の実感はない。後、ゴトクが回転して開く三本=各120度なので、「ちゃんと開いたっけ?」と不安に感じることがある。

 火力不足が心配な方はパロマやリンナイのウェブサイトに行って家庭用ガスコンロの出力を見ると良い。1kW=860kcal/hなので、2100kcal/hは換算すると2.44kW。パロマが標準火力とするのは2.95kW、小火力とするのは1.30kWといったところだ。リンナイが「一般的な中火コンロ」として挙げている出力は2550kcal/h。

 中堅定番モデルの欄に分類された機種は、今の時代になってみると登山用としては重く、要は時代遅れになっており、選択肢にならない。今の時代、本当に定番モデルとして挙げられるべきはP-153だ。
 ゴトクは回転して開く四本=各90度なので、見ていて不安がない。

 これに火力の心配をする人はいないと思うが、3600kcal/hは換算すると4.19kW、パロマが強火力とする4.2kWとほぼ同等である。リンナイが「一般的な強火バーナー」として挙げている出力は3610kcal/h。

 ガスは寒冷地用を買うこと。寒冷地用でも普通の場所で使えるが、普通のガスは寒冷地では使えない。「寒冷地には行かない」という人もいるかも知れないが、山の上は下界より寒いので、普通のガスでも大丈夫かどうか、初心者には判断できないだろう。使えなかった時に困るのだ。ごちゃごちゃ言って2種類のガスを使い分ける程の価格差ないし。
 容量は110、250、500があるが、250を基準に考える。初心者なら500は要らない、嵩張って重いだけになる。110は割高なのを容認できれば小型軽量化に貢献する。つまり検討すべきはIP-110か、IP-250Tか、という二者択一のみだ。
 組み合わせとしては小型軽量優先ならP-115+IP-110、万能を求めるならP-153+IP-250Tだろう。

 ストーブにガスを取り付ける前に、ストーブのコックが閉まっていることを確認すること。家庭用のガスコンロと回転向きが逆なので要注意である。開いていると取り付けた瞬間にガス漏れ、火の気があれば爆発だ。取り付ける時には缶を正立させること、斜めにしているとガスが液化したままの状態で漏れるので危険だ。ネジ式なのでまっすぐ入っていることを確認しながらねじ込むこと。強くねじ込み過ぎないこと。ゴトクを開く時は決められた位置までちゃんと開くこと。
 点火装置が付属するモデルでもフリント式ライターなり別に用意する。電子式の点火装置は標高が高いと火花が飛ばないことがあり、付属点火装置と同じ電子式のライターではリスク分散の意味が薄れる。フリント式ライターなら、もし現地でライターとして点火しなくても、火花さえ飛べば、ガスストーブへの点火は可能である。一番良いのはマグネシウムファイヤースターターで、これは水没させた直後でも拭いて使えば火花が飛ぶ。詳細は登山における点火装置、2014年05月版を。
 ガスは使えば減る。二度目以降の使用は残量に注意、不安なら新品をもう一つ予備に持って行くこと。

 登山に持って行く機材には何にでも言えることだが、持って行く前に、絶対に下界で使ってみること。実際に使ってみないと、本当に使えるかどうかは分からない。本当に使えるかどうか分からないものなど、絶対に登山に持ち込んではならない。あると思い込んでいるものがなかった場合、山の上で遭難を避けられるとは限らない。

関連記事:
登山における用具全般、2016年05月版
登山における点火装置、2014年05月版
登山におけるカートリッジホルダー、2013年11月版
OD缶は何度まで使えるか
バーナーヘッドが小さいのは欠点か

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