« 撥水性と防水性は違う概念 | トップページ | 登山における携帯ラジオ、2016年06月版 »

2016年5月14日 (土)

登山における靴、2016年05月版

 靴に関しては登山における服装、2016年05月版では触れなかった。なぜかを含めて解説する。

 まず、靴は「良い」「悪い」以前に「合う」「合わない」が重要な世界なので、具体的製品をお勧めしにくいのだ。
 もちろん常識的な条件というのはあって、それは「防水防湿」「ハイカットまたはミドルカット」「靴底が硬い」「靴底に逃げがある」「靴底が滑りにくい」「サイズが合っている」であろう。

・防水透湿
 防水性は必須である。 「予定している日程、ずっと良い天気予報だから大丈夫」というわけにはいかない。山の上は下界と天気が違うし、変わるのも急で、また悪くなった時は風も雷も下界より激しい。絶対に悪天候に備える用意は持たねばならない。
 履いている時間が長いため、透湿も絶対に必要。身体から出た蒸気が抜けないと結露し、防水でも身体はびしょ濡れになる。水は熱の伝達が早いので、身体が濡れると冷える。身体が冷えだせば遭難の危険が一気に高まる。運動量が大きいため、ただ透湿性がありさえすれば何でも良いわけではなく、ある程度高い透湿性が必要だ。

・ハイカットまたはミドルカット
 靴の背が高く、くるぶしまで覆われている靴である。足首をひねる危険を減らせ、防水性が保たれる。
 ハイカットが良いと思うが、現物を履いてみて「足首が固められてしまうので違和感があまりに強い」という人はミドルカットも検討の余地がある。あまりに低いと雨水が入るのでローカットは不可。

・靴底が硬い
 登山道は平面または階段状に整備された場所ばかりではない。いや言うまでもないがそこまでは整備されていない道の方が多い。靴底が固ければ、安定しているが尖った岩の上を踏んで行けるとか、楽なのである。また靴底が変形しないので、靴と足の間での擦れが少なくなる。登山靴として使うなら、店員に了承を貰って人力で曲げてみること。かなり力を入れてもあまり曲がらない程度のが良い。

・靴底に逃げがある。
 夏山の登山靴として使うためには、岩や土の上を歩く想定が必要だ。「当たり前」ではない。登山靴には雪や氷の上を歩くのを主の想定にしている製品があるためだ。
 岩や土の上を歩くには、靴底面が平面ではいけない。靴底前部が斜めに上がっている靴が「岩や土用」である。

・靴底が滑りにくい
 濡れた岩の上も歩いたりするわけで、滑りにくいに越したことはない。ビブラムソールが有名だ。他のメーカー製でも別に構わない。例えばモンベルは自社製のトレールグリッパーを使うモデルが増えてきた。どれを選んでも完全に滑らなくなるわけではない。

・足長が合っている
 普段履いている靴のサイズを店員に伝えて試着を要請し、素直にそのサイズを持ってくるような店は相手にしてはならない。まともな登山屋なら、必ずまず足長を実測するはずである。測定した数値に1cm足したサイズが検討のベースだ。その上で、実際に履いて歩く靴下の現物を履いた上で試着する。
 なぜかというと、傾斜のある不整地を長時間歩くという普段の状況では経験し得ない状況に出向くわけで、下界の平面で素人が短時間歩いた経験から導き出した主観的な印象など何の意味もないからだ。特に下りでは何時間も体重が爪先に集中し爪先を傷めてしまう危険がある。

・足幅が合っている
 足長の次に重要なのは足幅。日本人は3Eの人が多いという。で、モンベルなど日本のブランドはこれを標準として採用していることが多い。シリオはイタリア製だが日本で企画されたブランドらしく3Eが標準だ。幅の広い人は4Eで、モンベルの「ワイド」はこれ。幅の狭い人は2Eで、ヨーロッパ製品はたいていこれである。

 以上の話を踏まえて、信頼できる山道具屋にて試着の上で購入すべきだ。

 靴の履き方もちゃんとすること。
 足を入れたらカカトをコンコンと地面に軽くぶつけ、足のカカトを靴のカカトに合わせる。購入時に足長より1cm長いのを選んだから、足のカカトを靴のカカトに合わせれば爪先前には1cm隙間があるはず。この状態で靴紐を縛る=後ろにくくりつけられる形になる。足で一番弱く痛めやすいのは爪先、靴先に接触させないようにするわけだ。登りよりも下りで靴紐をきつめに締めるのだが、その理由は改めて説明不要だろう。

 以降モンベルのラインナップに従いどんな靴があるかを説明する。他のメーカーでも靴底の形状と硬さ、カットの高さなどを見ることで自分の使い方に合う靴を選べるはずである。

 アルパインクルーザ−3000はモンベル登山靴の最高峰であり、アルパインクルーザー2800はその次。だが「迷ったら上のグレードで」という法則にこの2つは全く当てはまらない。保温材が入っており、夏山では暑い。またアイゼンとの相性を優先して靴底下面が平らに近く、岩や土の上は歩きにくい。

 このトップ2モデルに関しては、インターネットで登山靴の選び方を人に聞くような初心者は買ってはならない。

 次はアルパインクルーザー2500、アルパインクルーザー2000、ツオロミーブーツ、このあたりが夏山用の登山靴として使われるべきグレードだ。

 この3モデルの中で靴底が一番硬いのはアルパインクルーザー2500で、アイゼン装着にもある程度対応する。岩や土の上を歩く想定で靴底前部は斜めに上がっている。

 

 男性用と女性用があるが実際には色設定とサイズ設定が違うくらいで、これは以下全モデルに共通だ。

 アルパインクルーザー2000は、アルパインクルーザー2500との比較だと少し靴底が柔らかくはなるが、夏山登山に使う上では適正な範囲。


 外装が革製で少し高級感があるかな、という程度で、次に挙げるツオロミーブーツと本質的にはあまり変わらないと思う。とすれば「外観が気に入った」という人以外は、これを選ぶならツオロミーブーツの方になると思う。

 ツオロミーブーツは夏山登山に向く靴の中では手頃で、アルパインクルーザー2500と並んでオススメの一つ。


 残雪期も含め幅広く本格的に続けたいならアルパインクルーザー2500、夏山に限定するならツオロミーブーツかな。

 テナヤブーツはツオロミーブーツの靴紐をステンレス鋼ワイヤーに置換したモデル。ダイヤルを回すと締め上げ、ダイヤルを引っ張り出すと「カチン」という音とともに緩む。

 ハイカットブーツの靴紐を上まで締めるのは慣れるまで大変なのだが、これなら足を入れてダイヤルを回すだけで締められる。歩いているうち緩んでくるという話もあるがそれは靴紐も同じだし、増し締めは非常に簡単である。ワイヤーが切れた場合通常の靴紐を持っていれば非常用ループに通して帰って来るくらいは可能だ。予備のワイヤーと工具を持っていた場合はその場で交換できる。スノーボード用などでは多用されているが、まだ登山靴の分野で実績が少ない。また靴紐の微妙な調整はできない。

 ハイカットは違和感あるという人はミドルカットのタイオガブーツ。

 足首は動かしやすくなり違和感は減るが、その分足首の保護や防水性は落ちる。

 名称は同じミドルカットながら、ティトンブーツはさらに少し低くなる。

 レインウェアを選択する際に裾の長さを少し長めで選んだ方が良いかも知れない。

 ラップランドブーツは靴底が柔らかく、あまりお勧めしない。

 モンベルウェブサイトでも「日帰りハイキングから富士登山まで」となっており、要するに余程整備されたコースしか歩けないということだ。

 もし「近所に信頼できる山道具屋さんがなく、どうしても通販で買うしかない」という状況であれば、自己責任で「足長+1cm」のツオロミーブーツを買ってみるということになるだろう。以前は「通販でどれを買うべきかなんて一切書けるか」と書かなかったし今でもそう思うけど、ウェブサイトで色々読んでいると「普段履いているサイズで通販して酷い目にあった」とかいう話も出てきたりするので、それよりはマシだと思う。

関連記事:
登山における用具全般、2016年05月版

編集

|

« 撥水性と防水性は違う概念 | トップページ | 登山における携帯ラジオ、2016年06月版 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/118328/63628352

この記事へのトラックバック一覧です: 登山における靴、2016年05月版:

« 撥水性と防水性は違う概念 | トップページ | 登山における携帯ラジオ、2016年06月版 »