2006年3月 1日 (水)

記録と、人間の記憶、そして時代認識

 世間には「セピア色の記憶」という言葉がある。
 白黒写真が褪色するとセピア色になる。人間の記憶は非常に不確かで、写真がセピア色になると実際の風景もセピア色だったような気になる。そこから出た言葉だ。
 白黒写真しかなかった頃の人は、写真がセピア色に褪色すると「これは昔のこと」と認識したのだろう。

 カラー写真が主流になって随分経つ。「セピア色」がどんな色なのか知らない人も多い。それでもカラー写真は褪色し、褪色した写真を見て人は「これは昔のこと」と認識する。

 写真が褪色する頃には、写真の手助けがないと忘れている出来事も多いと思う。△11などは自分の写真を残さないようにしていたので、撮影旅行を除けば大学時代何をしていたのか全く分からない、、、何もしていなかったんだろうという突っ込みは止めてくれぃ(^_^;

 その大学時代、友人Tがどこかでアドルフ・ヒトラーのカラームービー映像を見て「色付きのヒトラーやエヴァ・ブラウンが手を振ったり歩いたりしているんだぜ、ありゃ驚いた」と興奮して話してくれたことがあった。
 1970年前後に産まれた世代にとって「白黒でしか残っていない映像は自分と直接の関係がない」と認識している。だから白黒でしか見たことがなかったヒトラーは世界史の教科書で見るだけの歴史上の人物だ。カラー映像で見るとそれが覆されてしまう。
 この時「世界史の教科書に載っている歴史上の事件は今自分たちがいる地球の上で起き、自分と関係のあることなのだ」と2人で再認識したものであった。

 余談だが、最初のカラーフィルムは褪色に非常に強いコダクロームであった。後にエクタクロームが出て、コダクロームはマイナーになった。だから1945年より以前のカラー映像は戦後すぐの、とは言わずたかだか40年前のカラー映像よりも鮮やかに当時の色を残していたりする。

 最近は記録がデジタル化し、記録もどんどん鮮鋭化し、かつ褪色しないようになって来ている。しかしその代わり、積極的に残そうとしないと跡形もなく消える。
 物置にあった箱の中から20年前の写真を見つけて「こんなこともあったねぇ」、40年前の写真を見つけて「記憶にないけどこんなところいつ行ったんだろう」、60年前の写真を見つけて「これはバアちゃんだよねぇ、一緒に写っているこの人は誰なんだろう?」等と感慨に耽ることはなくなるだろうか。
 2000年頃に産まれた人の記憶や認識の形はどうなっていくのだろうか。

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