2015年6月16日 (火)

登山における寝袋のカバーとシーツ、2015年06月版

 実はこの分野で特別「ぜひとも買った方がいい」という製品はない。

・スリーピングバッグカバー

 あった方がいいが、ないならないでやって行ける。
 なぜ「ないならないでやって行ける」と思うか、と言うと、濡らしてしまうのは就寝時だろうし、1泊なら濡らしても次の日は背負って来るだけだからだ。濡らしてキツいのは連続しての2泊目以降であり、そんなこと初心者の頃からするとは思えないからだ。

 結論から言えばこの分野はほぼ一択。ブリーズドライテック U.L.スリーピングバッグカバーワイド、品番#1121028である。¥12231+税。190g。ブリーズドライテックの2レイヤー。

 

 色々類似製品はあるように見えるが、実は「何を人に勧めるか」という観点で見ると意外に選択肢はない。

 △11のお勧め通り寝袋にダウンハガー800を選択していれば、これは寝袋自体にポルカテックス処理がしてあるので、わざわざカバーを買うのに防水透湿は絶対であり、ポルカテックスのカバーは論外である。
 んで、論じるのはゴアテックス製かブリーズドライテック製か。透湿性ではほぼ同等。防水性はゴアテックス製の方が高いが、実際に濡れないのであればそれで充分なので、ゴアテックスの必要はない。何よりゴアテックス製は高価だ。¥18300+税。

 ノーマルかワイドか。これは寝袋本体による。本体がストレッチで伸びるならワイドにしておかないとその機能を殺してしまうことになりもったいない。逆に本体にストレッチ性がないならワイドにする意味はない。
 寝袋は、ただでさえ山道具の分野ではコストパフォーマンスに優れる傾向があるモンベルが一番得意とする部門の一つである。ストレッチはその売り文句の一つでありほとんどの製品に多かれ少なかれストレッチ性がある。個人的にモンベルの寝袋を選択しているのでカバーはワイドになるわけである。

 ノーマルかロングか。これは身長により選択する。モンベルは寝袋も含め178cmまでノーマルで対応することになっているが、少し余裕を見て175cmくらいからロングにした方がいいだろう。すなわちブリーズドライテック U.L.スリーピングバッグカバーワイド&ロング、品番1121029。¥15642+税。235g。


 2レイヤーか3レイヤーか。要するに単独で薄い夏用寝袋として使えるか、ということだ。裏地がない2レイヤーだと肌に直接接触させられない。「そりゃ3レイヤーの方が便利でしょ」と思うかも知れないが、重さが全然違うのだ。3レイヤーは2レイヤーのほぼ倍、400g程になる。それならカバーはカバーに徹させた方が良いと思う。

・シーツ

 基本的には不要である。必要性があるとすれば「寝袋に直接触れないようにして汚さないことで洗濯の頻度を減らし長持ちさせたい」「小屋泊まり、布団干しもままならない状況で皆が寝る布団で直接寝たくない」くらいだろうか。前者に関しては相当なヘビーユーザーであろうし、後者に関しては潔癖性だ。個人的には「そもそも山小屋の布団で平気で寝られない潔癖性の人間が登山なんぞ趣味にしない方が幸福なんじゃないかな」とは思う。
 買う時に注意すべきは、モンベルのコットン製は大きくて重く、山道具としてはかなり厳しい。590g。

 一応新型のキャンプシーツをお勧めしておく。¥1900+税、220g。


 ただし材質がポリエステルタフタ、すなわちスタッフバッグと同じで、あからさまに合成繊維であり、それに違和感を感じる人もいるかも知れない。

 「高価になっても良いから肌触りの良いものが欲しい」という人には絹製。例えばイスカのシルクシーツレクタ。¥7344→6725円、130g。


 モンベルのシルクシーツだと¥10477+税で、他メーカーでも大差ない。

関連記事:
登山における寝袋、2015年10月版

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2014年3月19日 (水)

ツーリングにおける二人用テント、2014年03月版

 ここで言う「二人用」とは、実際に二人で使うことを必ずしも意味しない。メーカーが記載する使用人数は「雨露凌げる人数」ということで、実際にその人数が寝てみると荷物も持たず頭と足を互い違いにしてぎりぎりの数字なのである。それぞれが荷物を持ち込んでゆったり寝るためには、1.5〜2倍の数値を見込んだ方が良い。登山用なら小型軽量を優先して一人で寝るのに一人用を使うとしても、ツーリング用なら二人用を使った方が良いかも知れない。ファミリーキャンプで四人使用なら七人用とかでちょうど良いくらいである。
 というわけで、メーカーで作っているイラストを見てみて、本当にそれぞれが荷物を持ち込んでゆったり寝られる面積があるかどうか、事前にチェックする必要がある。

 登山用と比較してツーリング用の特性は、防風性、耐候性、小型軽量よりも、快適性、価格競争力が求められる。ただしオートキャンプ用程小型軽量を無視できるわけでもない。

 アライテントで挙げるとしたら、トレックライズ2になるか。幅210×奥行150×高さ110cm。1680g。¥48825。

 ただこれは確かにエアライズとの比較では耐候性より快適性を優先しているという意味では登山用ではないものの、ツーリング用テントとしては高価で、無駄に軽い。つまるところツーリング用ではなく「トレック」用なのだろう。背負って歩くなら軽量は必須条件だ。しっかしエアライズより高価とは思わんかった(^_^;

 モンベルのクロノスドーム2。これはまさに目的に合致したスペックだ。幅230×奥行130×高さ105cm。2150g、ペグ等含め2450g。¥22800。

 ゴアライズ1を見慣れた△11の目で現物を見ると相当風通しが良さそうだ。
 テントの端は背が低くて使えず寸法通りには行かないのだが、この製品はポールが頭頂で90度に交差することで実際の寸法以上に広くなる。
 まぁまぁ安価なのも良い。

 モンベルのムーンライト2。幅90-150×奥行220×高さ78-120cm。2600g、ペグ等含め2800g。¥25800。

 クロノスドームと比較して、個人的には設計が古くさくて魅力を感じない。設営が簡単とは言うが他の製品も簡単で当然になっているし、全体的にぐっと狭い。

 となると今のところクロノスドーム2かな。

関連記事:
小型テント生活のノウハウ、2014年11月版
登山における一人用テント、2014年03月版

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2013年10月29日 (火)

車内泊のノウハウ、2013年10月版

 以前はダイハツ アトレーLXターボが愛車だったので、旅行と言えばほとんど車内泊で行っていた。もう廃車にして8年近くになり随分忘れてしまったと思うが、記憶が全く消え去る前にノウハウをまとめて書いておきたいと思う。まぁバイクで幕営の場合もかなり共通である。

 まず駐車場所が問題になる。たいていは駐車場を選択することになる。夜間チェーンなどで封鎖される駐車場は論外。
 一番欲しい施設は言うまでもなくトイレだ。ただ深夜施錠されるトイレもあり、あっても当てにできるかどうかは要確認である。
 無難で便利なのは道の駅で、日本中どこにでも結構な頻度で存在し、24時間駐車場、トイレ、電話が使える。ただ幹線道路沿いにある場合が多く、うるさいのが気になる人は接している道路の夜間交通量を考えて選んだ方が良いだろう。

 駐車場所が決まったら、その敷地内でどこに止めるかが問題となる。条件はいくつもあるので順次説明して行く。

・できるだけ水平な場所
 普通の人は普段水平な場所で寝ているだろうから、あまりに斜面だと寝苦しい。
 斜面になることが避けられないなら、頭にしたい方を高くして駐車する。すなわち駐車の段階で、自動車の中でどっちを頭にして寝るかも考えていなければならない。

・トイレに近く、しかし近すぎない
 最初は「トイレにすぐ行けるように」と考えてトイレのすぐ隣に止めがちであるが、経験を積むと少し離した方が良いことが分かる。臭気や、深夜トイレ利用者の物音が気になる場合もあるからだ。また朝食の段階になってトイレのすぐ隣は気分的に嫌なものだ。車数台分なんて離れたところで実際にはトイレに行くのに何の支障もない。

・本線から距離がある
 深夜に交通量が多い路線限定の話であるが、例えば長距離トラックがバンバン走っているすぐ隣に決めると、うるさいことがある。
 まぁ△11は街道沿いの家で育ったせいか、少しばかり交通量が多くても平気で寝てしまうのであまり気にしなくても大丈夫なのだが、静かであるに越したことはないわけだし、場所を決める際には一応考えには入れていた。

・街路灯との関係が適切
 夜間に何かモノを探す時、車内に街路灯の光が入っていればわざわざ懐中電灯を手探りで点灯させる手間が省ける。これも最初は街路灯真下に駐車してしまったものだが、街路灯真下だと天井に遮られて車内は暗くなってしまうので、車内を照明してもらうには斜め下の場所が良い。またあまり近いと街路灯に呼ばれた虫が多くなったりもするので、距離もある程度考えに入れなければならない。
 また駐車時に点灯していた街路灯が朝までずっと点灯している保証はないので、どのような位置関係を選択したとしても、懐中電灯はいつでも手探りで点灯させられるよう準備してから寝ること。
 暗くなければ眠れない性質の人は、逆に街路灯の光が車内に入らないように考えて位置を決める必要があるだろう。

・朝不愉快でない
 寝る時はなかなか朝の話まで考えが及ばないものだ。しかし朝になって不愉快だったり、わざわざ移動させるのは大変なので、朝のことまで考えて場所を決めた方が良い。
 朝食とトイレの話ですでに少し書いたが、他にも例えば夏に日差しが照りつけない場所にするとか、朝食にスライドドアを開いてご飯を炊くなら晒し者にならない場所にするとか、色々あって、想像力の勝負である。
 まぁ△11個人としては、通学の小学生が不思議そうな顔で列をなして歩いて行く前でご飯を炊いていたこともあって、あまり気にしてもいないのだが、、、

 基本的に普通の旅行と持ち物は変わらないが、まぁ、あったら良いものはある。寝る時は、ちゃんと服を着たままでは足が疲れるのでパジャマなりジャージに換えたい。道の駅ならそんなことはないだろうが、トイレによっては切れてしまっている場所もあるのでロールペーパーは必須。トイレに行く時にいちいち靴を履くのは面倒なのでツッカケ等があると便利だ。

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2013年6月 9日 (日)

登山規制の是非

 ニュースで山岳遭難が話題になるたびに、インターネット上で「登山なんか禁止してしまえばいい」という話を読むのだが、一体彼らは自分がどれだけ危険な主張をしているのか理解しているのだろうか、、、理解してないから主張しているんだろうな。

 彼らの主張はこうである。「登山は危険である上に、救援者の二次遭難の危険もあるので迷惑だ。危険なことを禁止するのに何の問題もない」。

 登山は危険?
 全く危険のない状態などあるのだろうか。
 ドライブもツーリングもサイクリングもランニングも水泳も散歩もできんぞ。いや家の中で寝ていたって、飛行機が落ちて来る危険はある。地震が起きて建物が倒壊する危険はある。
 本当に死の危険をなくすには、死ぬしかない。いや冗談じゃなくて。

 登山は生活に必要ないし、普通の趣味とは危険の程度が違う?
 法律ってのは、扱いを変えるなら、誰でも見てすぐに分かる線で分ける必要がある。そうでないと恣意的な扱いを許すことになってしまうからだ。
 △11の知る限り、国内で冬山でない一般ルートで行なう登山ってのは、言うほど危険ではない。無謀登山が危険なのは言うまでもないが、無謀運転が危険なのと同じで、それを以て普通の自動車運転や登山が危険である証左には使えない。
 そもそも「趣味の登山は禁止しろ」って言っている人は、「趣味」「山」をどこからだと思っているんだろう。標高198mの裏山に犬連れて散歩に行くのは登山じゃないのか。
 イメージや標高と、実際の危険も全く比例しない。夏に上高地から3190mの奥穂高岳に登るとか、そういうメジャーなコースなら、登山口から山頂まで人が列をなしているので、「道を間違えて迷い込んじゃった」「脚を怪我をして動けなくなって誰にも気づいてもらえない」、そういう危険があり得ない。遅くなって目的地にたどり着かなくても、最寄りの山小屋に逃げ込んで朝まで布団で寝てれば良い。安全なのである。静岡市の裏山で1051mの竜爪山に登った時は、歩く時間こそ奥穂高岳より短いものの、登山口から登り始め登山口に下山するまでの間誰にも会わなかった。同じ場所で同じ時期でも濃霧が出れば危険度は一変するし、それには15分もあれば充分。
 線引きなんかできないんである。
 あるトップカーレーサーの、こんな趣旨の発言を読んだことがある。「僕はサーキット以外では飛ばしません。エスケープゾーンもないですし、救急車も常駐していませんし、一方通行じゃないですし、走っている方の技量も色々で、危険ですから」

 二次遭難の危険に関しては、例えば「天候の回復を待ってですね、、、」と説明している山岳警備隊の警官に対し「見殺しにするのか、救助に出ろよ、それが仕事だろ税金泥棒」とかいうモンスターに対してノーを言える社会があれば充分である。
 無論助けに行けるのに怠惰で行かないのは批判されるべきだが、救助は二次災害を起こさない範囲で行なうべきだ。当然である。

 彼らの言い分はどうだろうか。何がどのようにどの程度危険なのか考えず「とにかく危ないし迷惑、禁止しろ」と喚き散らす、その本音は「自分さえ良ければ、人のことなどどうでも良い」というところにあり、まさにそれこそが、モンスターの本質なのである。違う場所で「見殺しにするのか、救助に出ろよ、それが仕事だろ税金泥棒」と喚き散らすことになるのである。
 一体そんな奴が跋扈する世の中のどこで当然のように「今は二次遭難の危険があるので捜索隊は出せません」と言えると言うのだ。

「彼らが私を攻撃したとき、私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった。」(マルティン・ニーメラー)

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2013年4月17日 (水)

なぜポルシェ911はRRだったのか?

 ポルシェ911、と一言で言っても、最初の901型、930型、964型、993型、996型、997型、991型に至るまで色々ある。そもそも△11はRRのポルシェに関心が薄い上に、ポルシェ993型以降は馴染みも薄い。そういうわけであまり自信がないのだが、一応現在の見解を書いておきたい。
 ポルシェ911GT1はミッドシップになっているので、ここでの話からは除外である。964型以降出て来たカレラ4と、最近ターボにある4WDも。だからこの記事のお題は過去形になっている。

 さてポルシェ911を語るその前に、その源流であるフォルクスワーゲンタイプ1がどうしてRRだったかを確認せねばならない。これは広く知られていて、異議を唱える人はいない、と思う。

 「フロントエンジンでない理由」として、減速時に重心が中央よりになるので安定する。
 「フロントドライブでない理由」として、加速時に重量が駆動輪に掛かるためタイヤが空転しにくく、動力を路面まで伝えやすい。
 「FRでない理由」として、エンジンと駆動輪が近いのでプロペラシャフトが不要である。結果駆動系の容積、動力伝達ロスが小さい。
 「MRでない理由」として、後席にも人が乗れ、すなわち4人乗りが可能となる。

 だ。

 このうち、MRを作る際にも、最後の「MRでない理由」以外はすべて有効である。加減速に関してはRRほど有利ではないが差は小さく、旋回を含めれば間違いなくMRの方が有利だろう。

 「いやいやおめぇ、MRで4人乗れるモデルもあるって書いてたべ?」
 うん。マトラM530、ディーノ/フェラーリの208GT4、同308GT4、フェラーリのモンディアル、ランボルギーニのウラッコ、マセラティのメラクなど1970年代を中心に2+2座のMRモデルが確かに存在した。
 「そんならMR2+2座の方が重心が中心寄りになるだけRR2+2座より有利なんでネェか?」
 それが今記事のテーマである。

 考える材料に、MR4人乗りモデルの軸距(ホイールベース)を見てみよう。スポーツカーにとって非常に重要な一つの要素となる数値である。
 ディーノ/フェラーリの208GT4/308GT4は2550mm。モンディアルは2650mm。参考までに同時期のフェラーリ2座MRモデルを見るとディーノ206は2280mm、ディーノ246は2340mm、フェラーリ308は2340mm、フェラーリ328は2350mmだから、格段に伸びてしまっている。
 ウラッコだけは例外的に2450mmとまともな数値である。でも特に短くはない。
 メラクは、この中では一番気筒数が少ないV6を積んでいるが、2600mmある。

 なぜ軸距が長くなるのかと言えば、入れるものが多いからである。軸距に入れねばならないものは、FRやRRの4座であれば「2座」「2座」だけ、MR2座であれば「2座」「エンジン」だけのところ、MR4座は「2座」「2座」「エンジン」を入れねばならないのだから、コンパクトにして押し込むか軸距を長くするしかない。ウラッコがまぁまぁまともな数値になったのは、エンジンを横置きしているからだ。逆にメラクは多分ボーラと基本構成を同一にしている無理が祟っている。
 コンパクト化には限界と、無理がある。無理に軸距を縮めれば、エンジンが後車軸に乗ってしまう。過半数のシリンダーが後車軸より前にあれば「ミッドシップ」のセールストークは手放さずに済むかもしれないが、ミッドシップの恩恵は全くない、重心が高くて後ろにある危険な車になる。
 ポルシェ911は当初2211mm、まともになったBシリーズ以降は2268mmで、その後実に993型まで大きい変化なく行ってしまう。996型で2350mmに伸長し997型でもそれを踏襲、991型でやっと2450mmとなっている。エンジンを軸距内に入れないRRの恩恵である。
 もちろん軸距は短ければ短いほど良いわけではない。高速安定性のためには長い方が有利だ。例えばランチア・ストラトスは2180mmしかなく、結果ちょっとスピードを出すとまっすぐ走らずふらふらするらしい。これは最高速が低くカーブが多いラリーでの勝利を目的とし、合目的的に決められているのだろう。マクラーレン・F1の2720mmってのは走らせて面白い車ではなさそうに思えるが、その最高速を考えれば仕方がないのだろう。ポルシェ911の軸距が伸びつつあるのも、その性能が上がって高速安定側に振らざるを得ない事情もあるのだろう。要は長くても短くても用途に合っていれば良いわけだ。しかしメラクの2600mmだのモンディアルの2650mmだのってのは想定される速度からしていかにも長過ぎるように思える。

 無論神様は公平であって、ポルシェ911ばかりに肩入れしているわけではない。MRからRRにすることで恩恵ばかりでなく不利益もある。当然重心は後ろよりになるはずだ。問題はないのだろうか。

 △11は以下のように考えている。
 旋回性能を上げるには「重心が中心に近いこと」「重量分布が集中していること」「軸距が短いこと」と並んで「重心が低いこと」も非常に重要なわけだが、複数の問題を理想的に解決できない時には、いや複数の問題を全部理想的に解決できるなんてことは滅多にないんでほぼ常に、利益衡量になる。そこでポルシェは「重心が中心に近いこと」より「軸距を短く保てること」「重心が低いこと」を重視した。
 だからこそ水平対向、ドライサンプということになるわけである。エンジンパワーも無闇に上げず、タイヤの性能上昇との兼ね合いを見ながらだった。ポルシェが多用したターボチャージャーは、排気量拡大や気筒数増加と比較すればあまり重量が増えずエンジンの図体も大きくならないためバランスが崩れにくいパワーアップの手法である。
 無論可能な範囲で「重心が中心に近いこと」も追求するわけで、無視するわけではない。
 それにRRで作っておけば、もしMRも作りたくなった場合、リアシートを取っ払ってエンジン→トランスミッション→ディファレンシャルというつながりをひっくり返して設置すればMR2座も作れる。実際ポルシェ550はポルシェ356から、ポルシェ914/6はポルシェ911の901型から、ボクスターはポルシェ911の996型からこの手法で製作されている。

 もう一つの不利益は、「ミッドシップだ、というセールストークが使えない」こと。これは今でこそ笑い話かも知れないが、当時としてはかなり大きな重荷だったはずだ。何しろサーキットへレースを見に行けば、市販車ベースでない本格的なレース程、皆ミッドシップなのである。当時ル・マン24時間レースでもフォーミュラ1でも、ごく一部の例外を除きFFやFRやRRの自動車が走ることはなかったし、実際MRでない市販車両は他ブランドの場合「クラシックカー」または「ファミリーカーに毛が生えたもの」と判断されるようになっていた。
 しかしポルシェ911に関しては、ポルシェが解決するまでもなく顧客の方が勝手に解決した。日本だけのことかも知れないが、ポルシェのMRレーサーが多数あることを無視してまで「ポルシェはRRにこだわっている」と誤解し、ミッドシップの恩恵を無視すべく自らを洗脳してしまったのだ。

 まだ我々には宿題が残っている。上で見て来た通りランボルギーニのウラッコは、2+2座、ミッドシップ、短くはないものの長くはない軸距、、、を全て実現した希有な自動車である。一体なぜこの自動車はポルシェ911のように評価されず、また売れなかったのだろうか。それは今後考えたい。

関連記事:
RR、空冷、水平対向、自社製6気筒エンジンでなくても本物のポルシェである
「なぜポルシェ911のエンジンは後ろにしてあるの?」

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2013年4月 6日 (土)

「スーパーカー」はまともなジャンルではない

 △11の人となりを知っている人には説明不要だと思うが、△11は「スーパーカー」というジャンル分けが嫌いである。

 以前より個々の車種について「一体この車種はスーパーカーなのか?」という議論は絶えなかった。
 まぁ、ランボルギーニ・カウンタック、ランボルギーニ・ミウラ、フェラーリ・512BBは問題ないかも知れない。しかしその他はどうなんだ。

 V型8気筒エンジンしか積んでいないフェラーリ・308はスーパーカーと言えるのか。フロントエンジンのフェラーリ・365GTB/4は。アメリカ車のシボレー・コルベットは。スーパーカーという用語が出て来るずっと前の時代のメルセデスベンツ300SLは。直列6気筒エンジンのBMW・M1は。直列4気筒エンジンのロータス・エスプリは。エンジン出力や走行性能がいわゆるスーパーカーより高くても、ライン生産のスカイラインGTーRは。オートマチックトランスミッション設定のあるホンダ・NSXは。時代が下ってもっと普通の自動車でランボルギーニ・カウンタックより出力のある自動車がゴロゴロしだしたが、それはどうする。

 ディーノ・246はスーパーカーであろうか。ランチア・ストラトスは。ポルシェ・924は。
 一体、ロータス・ヨーロッパがスーパーカーであろうか。シリーズ1のエンジンは実にルノー製R16用をライトチューンした直列4気筒1565ccOHV82hpでしかないのだ。
 いやスーパーカーの定義がなされていない以上△11は「スーパーカーではない」とも断言しないが、これらが「スーパーカーである」とする者の論拠は漫画『サーキットの狼』に出て来たから、のみであったりするんである。言うまでもなく漫画に、自動車の分類を規定する権能はない。
 △11に言わせれば、これらはもっと真面目に、目的があって設計されている。ロータス・ヨーロッパとディーノ・246はライトウェイトスポーツカー、ランチア・ストラトスはラリーカー、ポルシェ・924はスポーツ性を備えた小型グランツーリスモ。

 なぜこの種の議論が絶えないのであろうか。定義がないからである。定義がないまま分類を論ずるのは不毛である。

 そもそも「スーパー」って何だ。普通よりずっと凄いことだろう。凄いことが命題のものに、まともなものなどない。
 本当に素晴らしいものは、一見派手に見える部分があっても、全ての部分が派手であるわけではない。それは「凄いかどうか」ではなく、「実利があるかどうか」で採否が判断されているからだ。
 要は「スーパーカー」ってのはその名称の中に「まともなものじゃありません」と謳ってあるようなものなのである。

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2013年3月14日 (木)

「馬力」には3種類あって、それぞれ別の単位である

 昔の自動車関係の書籍を読んでいて思うのは、

・英馬力=HP(英語:Horse Power)
・仏馬力=PS(ドイツ語:Pferdestärke)
・日本馬力

 の3つの単位の違いが意識されていないのではないか、ということだ。同じ記事でHPとPSが同じ数値で混在していたり、HPの訳語として馬力を使っていたりする。

 今更当たり前のことを書くようだが、英馬力、仏馬力、日本馬力は違う単位である。
 取引で、米ドルと契約書に書いてあるのに、香港ドルで支払っても大丈夫だと思う馬鹿がどこにいるだろうか。しかし自動車出版業界でエンジン出力を記載する際にはまかり通っていた。今でもその影響は一般人にもかなり残っている。

 メートル法のみにどっぷり浸かって出たことがない人には分かりにくいかも知れないが、同じ呼び名の単位が地域によって、用途によって少し違うというのはよくあることだ。有名なのを挙げるが、他にもある。
 例えば長さの単位。フィートには国際フィートと測量フィートがある。
 例えば体積の単位。ガロンには英ガロン(4.54609リットル)、米液量ガロン(3.785411784リットル)、米穀物ガロン(4.4048428032リットル)がある。
 例えば重量の単位。常用オンス(28.349523125g)とトロイオンス(31.1034768g)がある。
 例えば速度の単位。ノットは1マイル/hだが、その1マイルが、、、まぁ事実としては国際海里=ノーティカルマイル(1852m)でほぼ統一されているのだが、色々ある。

 面倒臭いな。それだけじゃなく危ないじゃないか。そう言えばイランイラク戦争の時だったかに戦闘空域を避けるためコロンボに寄港して給油した機長が給油量の計算が合わずしばらく混乱したと述懐していたのを読んだことがある。機長が給油で考えている単位は米液量ガロンなのだが、設備側が「これだけ給油した」という数値は英ガロンだったというような話だった。

 そもそも、メートル法というものはそういう単位の差による面倒や錯誤を防ぐために策定されているわけである。

 自動車エンジン出力の話に戻る。
 「日本馬力」はメートル法に直すと750Wだ。しかし現在は使われなくなり、日本で「馬力」という場合には仏馬力を指すことが多いという。こういうのが一番混乱を招くのである。
 「仏馬力」はメートル法に直すと735.49875W、、、なのだが日本での仏馬力は735.5Wということになっている。換算を単純にするためだろうか。
 「英馬力」はメートル法に直すと745.69987158227022W。
 当然、外国語のデータでpsとあったのを日本語訳するなら「仏馬力」と書かねばならない。また海外書籍では小文字の表記もあるが、アルファベットで書くなら日本の計量単位規則により大文字でPSと書くことになっている。

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2013年2月20日 (水)

「スポーツ」の夢を見られるグランツーリスモ

 ポルシェに関して色々書いて来た。書きながら少しずつ感じるのは、△11が無意識に持っていた「スポーツカー」というモノへのスタンスを確認しておいた方が良いだろうということだ。
 もしかしたら、このブログを読んでいる人は、△11がスポーツカーに対して原理的な考えを持っており、自分の愛車はスポーツカーでなければならない、と思っているように誤解するかも知れない、と感じたのである。実際にはそうではない。

 スポーツカーに乗りたいか。または、スポーツカーが欲しいか。
 真面目に聞かれて真面目に答えるとすれば△11の答えは否である。△11はまず気兼ねなく乗り回せる万能車が欲しい。
 冬の朝でも夏の炎天下でも全く同じようにスターター一発で始動でき、安定してアイドリングするインジェクション仕様でなければならない。エアクリーナーのないファンネルのみのデロルトダウンドラフトなぞは論外だ。
 強烈に涼しくできまた暖かくできるクーラーとヒーターが装備され、故障なく稼働しなければならない。
 燃費は、貧乏でも時々適当に乗れる程度には、まぁまぁ良くなければならない。
 部品は安価でなければならない。信頼性は高くなければならない。「壊れる程かわいい」などという人もいるが△11にとっては考えられない。ガソリンを入れオイルを交換していれば全く何の音沙汰もないのが最高だ。
 荷物はたくさん積めなければならない。トランク一個入れたら何も載せられないような自動車では天文遠征に行けないし、旅行でも困る。
 オープンカーは嫌だ。雨漏りの観点でも防犯の観点でも、信頼できる屋根が要る。
 格好良くないと嫌だ。
 見るからに高価そうな自動車も嫌だ。要らん嫉妬を受けたり、場合によってはいたずらされたりするだろうから。
 日本車は嫌だ。どこかに自分の同類の現実的思考の痕跡を見つけてしまうから。

 ワインディングに出れば並以上の運動性能は欲しい。しかしそれは究極に高い必要はない。幸い、能力の高いメーカーが真面目にコストを掛けて作った中でも、うまく探せば安価に放置されている製品はある。
 ポルシェ924Sクラブスポーツは、まぁ世間から見ればスポーツカーの部類かも知れないしそうでもないかも知れないけれども、スポーツカーが欲しくて選んでいるわけではないのである。

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2012年11月 2日 (金)

ポルシェのロングセラーを考える

 前回の記事ポルシェ914はなぜ製造中止になったか中で「ポルシェ914は1969年に発表され1976年に製造中止になっているが、これはポルシェとしては異例に短い」と書いた。製造期間7年である。では一体他の車種はどうなのだろう。ポルシェ914を含め2012年現在で生産年数を列挙してみた。

356   1948〜1965年 17年
911   1964〜2012年 48年、継続中
912   1965〜1969年  4年
914   1969〜1976年  7年
924   1976〜1988年 12年
928   1977〜1994年 17年
944   1983〜1991年  8年
968   1991〜1995年  4年
ボクスター 1996〜2012年 16年、継続中
カイエン  2002〜2012年 10年、継続中
ケイマン  2005〜2012年  7年、継続中
パナメーラ 2009〜2012年  3年、継続中

 これを見る限り、極端に短いのがポルシェ912の4年、ポルシェ968の4年だ。ポルシェ914の7年とポルシェ944の8年がそれに次ぐ。
 極端に長いのが911で、 この「48年、継続中」ってのが「ポルシェ911はロングセラーだ」という話になるのだろうが、、、これを見て「ナンカオカシイ」と思わないだろうか。いや思わない人もいるかも知れないが、△11はおかしいと思う。
 ポルシェ924→ポルシェ944→ポルシェ968はポルシェ911の901型→930型→964型と同じような進化の過程なのだが、なぜポルシェ911は積算されポルシェ924系は積算されないのだろうか。901型と991型の差は、ポルシェ924とポルシェ968の差よりずっと大きい。

 例えばポルシェ911、ボクスターとケイマン、カイエンを型番で分割すれば以下のようになる。

901   1964〜1978年 14年
930   1974〜1989年 15年
964   1989〜1994年  5年
993   1994〜1998年  4年
996   1998〜2004年  6年
997   2004〜2011年  7年
991   2011〜2012年  1年、継続中

986   1996〜2005年  9年
987   2005〜2011年  6年
981   2011〜2012年  1年、継続中

955   2002〜2006年  4年
957   2006〜2010年  4年
958   2010〜2012年  2年、継続中

 、、、ポルシェ914は製造期間特別短いとは言えないかもなぁ。
 でも時代が新しくなればなるほど電子化等で陳腐化が速くなりモデルチェンジを早く迫られる方向にあるんで、その意味では例えばポルシェ914の7年より996型の6年は長いと言えるかも知れず、単純に比べることは難しそうだ。

 しっかし例えばポルシェ356はどうする。グミュント、プリA、A、B、Cはそれぞれ相当に違う。ポルシェ928も1987年のマイナーチェンジはかなり大きい。
 と言うか、細かく見て行くとどこで区切るのかなど明確な基準など決めようがない。もし決めるとしたら公式の車名がどうなっているか、になってしまうが、これを強行したところで「ナンカオカシイ」と違和感が残るばかりで何の意味もない結論が出るだけだ。これが分からない人は例えばカローラだのクラウンだのといった日本車の「ロングセラー」の方があからさまで分かりやすいのでそちらで納得して頂くしかあるまい。
 そう言えば、ポルシェ968はポルシェ944S3として開発されていたはずだ。

 もう「ポルシェ914の製造期間が短い方かどうか」などどうでもいい、これはもっと根本的な問題だ。

 またポルシェは「最新のポルシェは最良のポルシェ」などと言われたように、非常なる熱意を以て改良され続けるのが魅力である。旧態依然の製品をいつまでもそのまま売っている「ロングセラー」などという事態は、ポルシェが目標としている場所から見れば、あり得ない失態と考えることもできるし、そうでなくても本意ではないのである。当のポルシェファンがロングセラーを誇るのが間違いなんである。

「ポルシェは、自分の製品の改良を、けっして怠らないメーカーだし、そんなメーカーは世界中にごくわずかしかない」エルンスト・フールマン(『我らがポルシェーポルシェ何でも事典』P122)

 ロングセラーを誇るのは、モーガンやアバンティのファンに譲ろう。

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2012年10月27日 (土)

ポルシェ914はなぜ製造中止になったか

 ポルシェ914は1969年に発表され1976年に製造中止になっているが、これはポルシェとしては異例に短い。この理由は「売れなかったから」とされて来たが、以前記事「ポルシェ914系は不人気だった」も嘘で証明したとおりポルシェ914はポルシェ911より売れていた。しかしそうなると「なんでそんなに売れていた製品を製造中止にしたのか?」という疑問が涌いて来る。

 △11が色々調べている中で思い当たったのは、フォルクスワーゲンとの関係である、、、がその前に、そもそもフォルクスワーゲンとはどのような会社であったかを考えてみたい。
 源流は、フェルディナンド・ポルシェが長年暖めていた小型車の構想であった。何しろ1928年には実現を巡って当時勤務していたダイムラー・ベンツの幹部と対立し退職を余儀なくされているから、古い話である。ポルシェは独立してすぐこの構想を各社に提示してツェンダップ国民車=ポルシェ12、NSU国民車=ポルシェ32の試作段階まで漕ぎ着けた。
 これがアドルフ・ヒトラーの国民車構想に合致、少ない開発資金でフェルディナンド・ポルシェが短期間に設計した自動車はダイムラー・ベンツにより量産試作され親衛隊員により走行テストされ、KdFと名づけられ、これを量産するために設立されたのがドイツ国民車準備会社である。その後ドイツ国民車準備会社は国民車製造会社と名を変えたものの、実際に製造できたのは国民車ではなく軍用車であった。
 KdFは戦後イギリス陸軍のアイヴァン・ハースト少佐指導の下でタイプ1と名を変えて1945年から量産されベストセラーとなった。そして1948年09/17には「ポルシェはタイプ1の販売台数に応じロイヤリティーを受け取る」「ポルシェはフォルクスワーゲンのパーツと販売網を利用できる」「フォルクスワーゲンはポルシェの特許を自由に使用できる」「ポルシェはフォルクスワーゲンの競合車種を製造しない」という内容の契約を締結した。この結果莫大な資金がポルシェに流れ込み、またスポーツカーの素材としてフォルクスワーゲンのパーツが使用でき、ポルシェはそれを最大限に生かして車両開発やレース参加を続けて名声を得た。
 アイヴァン・ハーストの後を引き継ぎ1948年01/01にフォルクスワーゲン社長となっていたハインリヒ・ノルトホフはタイプ1の旧型化に伴いポルシェに次期量産車の設計を発注し、ポルシェは試作車EA266を完成させ、量産を目前にしていた。これが量産されベストセラーとなれば、またしばらくはフォルクスワーゲンからポルシェに資金が流れ込んだはずである。ハインリヒ・ノルトホフは「ポルシェなくしてフォルクスワーゲンは存在しなかったのだから、その恩義を返すべき」と考えていたのだろう。
 しかしフォルクスワーゲンという会社側からすれば、「自社でも可能な新型開発を他社に発注しロイヤリティーを支払うのは無駄な資金流出」と見ることもできる。ハインリヒ・ノルトホフが1968年04/12に急死すると、後任のクルト・ロッツはEA266の開発を進めながらも代替案の模索を始め、まずはNSUが開発していたK70を継続開発して1970年11/14に発表、これは16ヶ月経過の1972年03/01までに10万台、すなわち12ヶ月あたりに直すと7.5万台に過ぎない数が生産されただけだったが、事態は大きく変化し始めていた。さらに1971年10/01就任したルドルフ・ライディングはEA266の量産をキャンセル、ドタバタした末にポルシェと関係のないところで設計されたパサートが1973年5月に発表され、シロッコが1974年2月に発表され、そしてゴルフが1974年03/02生産開始、ベストセラーとなった。
 ゴルフについては生産開始より31ヶ月経過の1976年10/27で累計100万台生産を達成している。すなわち12ヶ月あたりに直すとこの間の生産ペースは約38.7万台/年だ。51ヶ月経過の1978年06/16に累計200万台生産は12ヶ月あたり約47.1万台。66ヶ月経過の1979年9月に累計300万台生産は12ヶ月あたり約54.5万台。95ヶ月経過の1982年02/25に累計500万台生産は12ヶ月あたり約63.2万台。この間1978年にトヨタ・カローラを抜いて年間生産台数世界一となる66万2393台を生産している。
 実際にドイツでのタイプ1製造が中止されたのは1978年01/09であるが、ゴルフについて「こりゃ売れてる、行けるぞ」という手応えがあった時点で時間の問題となったはずだ。
 ポルシェ914はフォルクスワーゲンとの共同プロジェクトであり、パーツのかなりの部分をフォルクスワーゲンから提供を受け、資本をフォルクスワーゲンとポルシェで折半し設立した販売会社「フォルクスワーゲンポルシェ」が販売を担当していた。ルドルフ・ライディングの元でポルシェとの「癒着」を断ち切る判断をしたフォルクスワーゲンがポルシェ914のためだけにパーツ製造を継続できるわけもない。
 1974年05/08にフォルクスワーゲンポルシェは解散、1976年にポルシェ914は製造中止された。
 ポルシェ914は、タイプ1の製造中止が近いことが明らかになり、その部品供給が難しくなると見込まれたことが製造中止の一つの理由である。

 もう一つの理由は、言うまでもないポルシェ924の発売である。これは元々アウディブランドで発売される予定でポルシェに開発が委託されていたものが中止になってしまいお蔵入りになるところ自前ブランドで発売することになったものだ。とすればポルシェ924はポルシェの発売タイムスケジュールには入っていなかったはずなのである。
 「もうすぐ部品の供給が難しくなるかも知れない」それだけなら部品が来る限り製造しても良いだろう。しかし当時のポルシェの規模からしていくつもカタログモデルを並べる程の企業規模はない。結果ポルシェ914はまだまだ売れている状況で製造中止されることになったのである。

関連記事:
ポルシェ914は市販ミッドシップ車の鑑の一つである
「ポルシェ914系は不人気だった」も嘘

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